02:反りが合わない刀もある - 3/3

 さて、いったんの話をつけた翌朝である。
「おい、何故下げる」
「三日月が使うち言うたきに」
「おれが使うからここにあったんだろう」
「ならしゃんしゃん使うたらえいが。言わんかったら話が通らん、当たり前の話ぜよ」
 吉行は歩み寄るより思ったことを言っていく方針に決めたようで、醤油さしひとつを取って朝からずいぶんと賑やかな調子。虎徹はそもそも気を遣うタイプじゃないし、国広もよっぽどヒートアップしない限りはにこにこと見守っているし、国俊たちに至ってはその喧噪も気にしちゃいない。国行だけはときどき目を向けているが、彼は察せるものをあえて察しない部類だ、いっそ愉快そうですらあった。
「これはまた、一段と賑やかになりそうだなあ」
「ひとが増えたらそのぶん賑やかになるってだけですよ」
 腕を伸ばして完全に忘れられた醤油さしを自力で回収した三日月さんのころころとした笑い声に、私も軽く頷きながらお味噌汁を啜る。国広がきてからというものの料理のバリエーションが更に増えていて、今朝のお味噌汁はつみれ汁だった。
「成る程、それだけのことか」
「それだけのことです」
 日常ってこうして変化していくのか、と。ほんの少しの目新しさを、つみれと一緒に頂いた。


First appearance .. 2023/08/12@yumedrop