あとは野に散る薔薇となる
まるで獣めいた人間の咆哮、咆哮の如き鬨の声。最前線でそれを煽る身でありながら、意識の奥底が戦争に必要なものを冷たく嗤う。言い知れぬ精神の乖離にも、そこから目を逸らし続ける諦念にも、この五年で疾うに慣れてしまった。慣れなければ、戦争などする…
文章FE3H,フェリクス
あとは野に咲く花となれ
その存在を認識したのは、春を迎えてしばらくが経った頃のことだった。 幼馴染を付き合わせては日課の如く訓練場で剣を振るい、適当な理由を付けてそこを去っていった軽薄な後姿にフェリクスが溜息を吐いたときのことだ。幼馴染の赤髪が視界の端に映らなく…
文章FE3H,フェリクス
アンダー・ザ
( Support C / in school ) 中庭に広がる薔薇園のふち、仄かに甘やかな花の香りが広がる影。リンハルトが最近発見した昼寝場所は中庭からも建物からも死角となっているようで、誰かが自分を探しにやってくることもない。午睡と惰眠…
文章FE3H,リンハルト
マイ・ロード
( Support C / in school ) それは修道院の食堂横を通り、市街地へ向かおうとしたときのことだ。休日に広がる独特の喧噪のなかでも僅かに異質なものを見つけたから視線をそちらへ滑らせれば、女性のひとりが困り果てたような顔で頭…
文章FE3H,エーデルガルト
マイ・ローズ
( Support C / in school ) 夜半過ぎに隣の部屋の扉を数回小突く。なかから声が聞こえるよりも先に「兄様」と呼びかければ「入りなさい」とお許しをもらったから、お邪魔しますと扉を開ける。夜に異性の部屋へ足を運んではいけない…
文章FE3H,フェルディナント
魚は天馬の夢を見るか
窓を開ければ風が差し込む。晴れて乾いた空気、山際のそれより柔らかくしっとりとした。食堂の窓のすべてを開けて、広い空間の掃除を始める。ガルグ=マク大聖堂では規則正しい生活をしているひとが多いから、朝には朝の混雑があって、それまでにはこの場所…
文章FE3H,シャミア