鍾離

神さまのくれたさよなら

 璃月の大通りは朝一番であろうと賑わっているのが日々の在りようであり、しかし今日に限ってはそれも幾らかおとなしい。ひと匙ぶんの静けさを切なく思うのは、自らが璃月の民であるからなのだろう。感傷未満の思いをくちに含みながら分かれ道に差し掛かった…

機織り、過日より

 ううん、と背伸びをしてもなお、本棚の最上段にはぎりぎり辛うじて手が届かない。より多くの書物を収納するのが本棚の本懐ではあるのだろうが、ひとの手が届かなければ結局のところその収納に果たしてどれほどの意味があるのか。は誰に向けることも出来ない…

花のわだち

 港で受け取った荷で両腕を満たし、軽い足取りで自宅へ戻る。小さな工房を孕んだ、ささやかだが満足のいく仮住まい。場所を与えられて間もなくは恐縮したしそわついてもしまったが、三日も住めばそこが最たる都となる。故郷の稲妻と並ぶ安寧の場所はもう目前…