刀剣乱舞

花はほころぶ、蝶は飛ぶ

「いっただっきまーす!」「はいどうぞ、たくさん召しあがれ」 お夕飯の時間になったら全員集合して、みんなで一緒に食卓を囲む。我が家のルールはいつも通り、今日のご飯も味は最高。ジャガイモの煮っころがしが美味しくてそればっかり食べちゃってたら「こ…

主よ、人の望みの喜びよ

 太陽がじりじりと頂点を焦がし、皮膚にはじっとりと汗が滲む。蒸発しきらない水気が頬を伝い、それを手の甲で拭って吐く息にすら熱がこもっている。肉体持つ生命のすべてを燃やさんとする夏の日差しは、けれど植物たちにとっては腕を伸ばすほど待ち焦がれて…

キッチンから愛を込めて

「それじゃあ行ってくるけど……本当に大丈夫?」「大丈夫だってば、子どもじゃないんだから。お母さんこそ、気をつけてよね」 夏休みが始まって、三日目のこと。家を空けることになった母を見送ろうと立った玄関では、大きなキャリーケースを引いた母が、そ…

獅子への嫁入り

 目が覚めて、肉体を起こし、支度を整える。ひとの身を得ることで増えた手間は手がかかると同時、快く心地好い。そもそも余分な行為を愉快に感じるこころがなければ、人間と同じ姿かたちでの受肉はしまい。獅子王は稲穂色の髪を飾りのついた結い紐でひとつに…

02:反りが合わない刀もある

 定めた業務時間が終われば、この本丸においては翌日の業務開始までが自由時間。夕食は全員で食卓を囲うことがすっかり定番化したけれど、正直それも自由参加だ。まあその食卓に便乗すれば自分で食事を用意する必要がなくなるので、そりゃあ誰もがそこに集う…

閑話01:今日も明日も頂きます

「いっただっきまーす!」 食べる前から大満足ボイスと一緒に手をあわせたのは国俊、その隣ではブロック・ブレッド肯定派のくせしてちゃっかり相伴に預かっている国行。三日月さんはずいぶん上機嫌に漆の箸を手にしていて、吉行はにっかにっかとご機嫌な顔で…

01:本丸稼働五日目で起きた米騒動

 始業時間は午前九時半、終業時間は午後六時半。なにもかもが定まっていないサーバー改め本丸内でとりあえず就業時間の大枠だけを決めて、あとは疑問が挙がったタイミングで随時解決を図ることにする。国俊曰く、「そうでなきゃ主さん、雁字搦めになって決め…

00:なるようにするだけ

 都内某所のオフィスビル。スーツを着こなした死んだ顔に混ざってエレベーターですし詰めにされたのち、二重のセキュリティゲートを通過。そこのところは一級品のくせして、何故か最後は扉を人力で開くアナログ方式。ドアノブを下ろして足を踏み入れたるは見…