フェリクス

あとは野に散る薔薇となる

 まるで獣めいた人間の咆哮、咆哮の如き鬨の声。最前線でそれを煽る身でありながら、意識の奥底が戦争に必要なものを冷たく嗤う。言い知れぬ精神の乖離にも、そこから目を逸らし続ける諦念にも、この五年で疾うに慣れてしまった。慣れなければ、戦争などする…

あとは野に咲く花となれ

 その存在を認識したのは、春を迎えてしばらくが経った頃のことだった。 幼馴染を付き合わせては日課の如く訓練場で剣を振るい、適当な理由を付けてそこを去っていった軽薄な後姿にフェリクスが溜息を吐いたときのことだ。幼馴染の赤髪が視界の端に映らなく…