ディシア

微睡みのまほろば

 アジトの椅子に腰を下ろして、火種のない暖炉をぼんやり見つめる。見つめるというより、視界に映った光景のどこにも焦点を定めずただ視覚情報を緩く認識している状態。すべての輪郭が僅かにぼやけた世界に浸っていれば、おうい、声をかけられた。 がぱっと…

夜の砂間、黄昏の海

 すべてを終えて『熾光の猟獣』の拠点へ戻ったとき、既に夜は深く更けていた。アジトの内側は静寂に伏しており、ひかりはディシアの手元を照らすカンテラのみ。身内と呼ぶに相応しい相手の誰とも顔をあわせていないことへの言い知れぬ乾いた心地、けれどそれ…

プリズム・デザート

 とぷり、井戸の底ほど深い夜。熱が溶けて肌を伝い、水気を含んだ愛情が、じゅん、と身体の奥で小さな音を立てる。たったひとりでは生まれないもの、あなたがいないと生じないもの。じゅくじゅくとした愛情に揺蕩いながら、わたしを抱き締める熱い腕に手を伸…