空は落ちてこない
途方もないほどに広大な砂漠を渡り歩き、烈日の遺構を幾度も巡る。狼藉の痕跡がないか確認し、いまなお機能する砂漠の守護者の横を通り抜ける。ひかりの乱反射と屈折を横目に、外套越しに風砂を浴びる。日光を弾いては煌めく砂の海に落...
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文章アルハイゼン,セトス,原神
守られるべき無垢な日々
スメールシティの片隅で、ただひっそりと息を吐く。視界に映る景色は知らないもので、伸びた道の先にあるものもわからない。それとなく周囲を見渡したところで知る顔もなかったから、は足を鈍く動かしながら苦い心地を無言で舐めた。今日、セトスは雨林に戻ら…
文章セトス,原神
砂のベールに触れてはならぬ
静かな空間で、本をめくる音だけが空気を僅かに震わせる。もしくは、ペンを走らせる音だけが。市場の喧騒から遠く離れた、大樹のさなか。スメールにおいて最たる知識の貯蔵庫でそれらを吸収していたは、鼓膜の拾いあげた異音によってその意識を中断させた。…
文章アルハイゼン,セトス,原神
美しき未来のための日々
目の前へ広がる光景に、息を呑む。美しき夜明け、生きとし生けるすべてのものに注がれるひかり。陽光によって煌めく水平線が網膜を焼く、その一閃に心臓が軋むほどの歓喜を覚える。滅んでなお鮮烈な王の威光を思って詰まらせていた息を細く吐けば、不意に右手…
文章セトス,原神
もう神様はいないから:後
教令院での用事を済ませたセトスが踵を返そうとしたところで、見慣れた人影が視界に映る。認識はほぼ同時だったから、互いに驚くこともない。セトスが「やあ」と気さくに手を振れば、相手は微かな首肯を返答とする。いかにも彼らしい振舞いに、セトスは自然と…
文章セトス,原神
もう神様はいないから:前
固い土の地面を歩き続けて、どれほど経っただろうか。しっとりと水気を孕んだ空気に包まれながら、鬱蒼と生える木々を脇目に道をゆく。ひとや馬車の往来を重ねるうちに固くなったのだろう足元の感触は、まるで知らないものだった。道から外れた先で短く映える…
文章セトス,原神
グッドナイト・ベイビー
止まっていた風が僅かに揺らめいたから、ひとの出入りに意識が触れる。灯りのしたで顔をあげたは見慣れた姿を見止めると、瞳のふちを緩ませた。「おかえり、セトス」「ただいま、。まだ本読んでたの?」「読みごたえがあったものだから。そういうセトスは、…
文章セトス,原神