アルハイゼン

空は落ちてこない

 途方もないほどに広大な砂漠を渡り歩き、烈日の遺構を幾度も巡る。狼藉の痕跡がないか確認し、いまなお機能する砂漠の守護者の横を通り抜ける。ひかりの乱反射と屈折を横目に、外套越しに風砂を浴びる。日光を弾いては煌めく砂の海に落... 続きを読む

砂のベールに触れてはならぬ

 静かな空間で、本をめくる音だけが空気を僅かに震わせる。もしくは、ペンを走らせる音だけが。市場の喧騒から遠く離れた、大樹のさなか。スメールにおいて最たる知識の貯蔵庫でそれらを吸収していたは、鼓膜の拾いあげた異音によってその意識を中断させた。…

森海遊泳

1. 歩を進めるごとに踏みつける草は多分に水気を含んでおり、柔らかな草の間から朝露の名残が染みては大地へ還元される。平野部のものと比較した際、この地域の植物は水分による根腐れを起こすことがほとんどない。それは、湿地帯に根差した植物たちが採択…